例会報告
石蔵 文信氏(大阪大学大学院医学系研究科准教授)

第616回定例会

日 時 : 平成24年4月10日(火)
場 所 : 京都全日空ホテル 醍醐の間
講 師 : 石蔵 文信氏(大阪大学大学院医学系研究科准教授)
テーマ : 「夫源病−こんなアタシに誰がした−」


夫の存在が妻のストレス?!

「人と言う字は、人と人がお互い支えあって出来ている、と言われるけれど、それは違う。完全に一方がもう一方を支えているのです。夫婦も一緒で、嫁が夫を支えているのです。」

今回の講師である、大阪大学大学院医学系研究科准教授の石蔵文信先生はそう最初に言い、ご自身の経験に基づきながら、ユーモラスな話題も時折交えて話を進めていく。
著書が度々テレビなどメディアにも取り上げられている先生は、中高年男性に多い高血圧症、糖尿病、心臓病など「男性更年期障害」の外来も大阪市内でされている。

その際、夫婦で治療をと勧めているが、それには理由がある。男性が例えば「うつ病」で外来の診察に来た場合、その妻も「うつ病」である場合が多いそうだ。つまり、男性が妻のストレスになっているのである。私は、まだ結婚していないので、夫婦というものがわからないが、「夫に早く死んでもらいたい」と思っている妻が多い、ということを聞いて何か非常に寂しい思いがした。

上から目線はダメ 恐怖のわしも・お前も族

ある夫婦の例である。夫 57 歳、これまで家庭を顧みず働いてきた。定年後は、妻と旅行などしたいなどと思っている。一方、その妻は、私の人生は夫のおかげでめちゃくちゃ、早く夫に死んでほしいと思っている。このような思いのすれ違いは何故起きてしまうのか。

根本には男尊女卑の考えがあるのである。妻を家政婦のように扱ってしまっている。いわゆる「上から目線」なのである。妻を対等な人間として見ていますか?見ているつもりでどこか「上から目線」になっていませんか。これは世の男性にとっての非常に重要な警句だと思う。

さらに性質が悪いのは、先生の言葉をそのまま借りると「恐怖のわしも・お前も族」である。妻が買い物に行くと言ったら「わしも」行く、自分がしたいことを「お前も」やれ。

これでは妻が息苦しくなるのも無理もない。定年後、夫のしたいことは「妻」と旅行などしたい。しかし、妻は「友達」や「子供」と旅行に行きたくて、決して「夫」に縛られたくないのである。また、概して夫は、名刺や肩書がないと、人と話せない、地域社会でどう生活していけば良いかわからないのである。老後に夫と暮らすと妻の死亡率は 2 倍になる、という悲しい事実もあるそうだ。

男性の自立 妻に謝れ

では男性はどうすれば良いのであろう。まずは「男性は女性の迷惑」と認めることである。次に、家事など身の回りのことは自分でやれるようにすること。男性も料理ができたほうが良いので、「肉じゃがに騙されるな」という料理教室も行っているそう。また、妻と会話するときには、解決法ではなく、「大変やな」と合いの手をいれること。夫は妻に素直に謝るのが良いと先生は話す。石蔵先生ご自身も実践されているそうだが、妻への言葉として、「ありがとう」「ごめんなさい」「愛している」を欠かさないこと。そして、誕生日や記念日は決して忘れないこと。大事な日には、花を贈る。それも、贈り方が大事で、これ見よがしに贈るのだそうだ。

男性会員にとって、耳の痛い話もあったが、良い気づきの場となった。

自分もまず自立した人間になるよう、精進したい。

≪文責:小松原 駿(学生スタッフ)≫